中途半端な訓練では何も身につかない

失語症の訓練というと、大抵は市販のドリルを使ったり、絵カードを使ったりすることが多いと思います。しかし、仮名1文字の音読や書字が難しい方が、仮名の音読や書字ができるようになるためには、そのような訓練ではほとんど身につきません。私は、訪問看護で失語症のAさんの訓練を数年間続けるまでは、そのことに気づきませんでした。

失語症のAさんの訪問看護リハビリを開始したのは、今から6年ほど前。回復期病院から在宅に戻った時に開始しました。初めの2年間ほどは、市販のドリルを使ったり、ここにあるようなプリントを作ったり。こういうことをしていれば、いずれは少しでも仮名が読めたり書けたりするようになるのではないかと思っていました。しかし訓練を継続しても仮名を読んだり、書いたりすることは難しいままでした。

残酷ですが、当初私はAさんに、「仮名の読み書きは失語症の方にとってとても難しいことです。ですので、漢字の書字訓練、呼称訓練、会話訓練をやりましょう」などと言っていました。

Aさんは特に私に注文することはありませんでしたが、不本意だったろうな、と今は思います。

しかしある時、私はこう提案しました。「仮名の訓練だけを集中的にやってみましょうか?それが実用的になるかどうかは分かりません。使えるようになるには長い道のりだと思います。でも1文字ずつ確実に読めるようになれば、髪の毛一本の変化であっても、積み重ねていけば大きな違いになってくると思います。」

Aさんは同意されました。

それ以来、Aさんは仮名の訓練を中心に行っています。

取り入れたのは、仮名1文字に、単語をイメージ付ける方法、キーワード法とも言われる方法です。

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