失語症という言葉を知っている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
私は言語聴覚士の養成校時代、教官に
「失語症の方が話ができなかったら、どうすればよいでしょうか」
と聞かれ、
「紙に文字を書いてもらえればいいと思います」
と答えました。
当時私は失語症の方にお会いしたことがなかったので、こんな馬鹿なことを言っていました。
失語症の方は、言葉を思い出しにくく、単語の文字もわからない(漢字や仮名を書くことはありますが、その読み方や意味がわからない)ので、話すことはもちろん、書くことも難しい方がほとんどです。
加えて、言葉の意味を理解するのも難しい場合が多く、「新聞とって」と言われても、『シンブンってなに?』となってしまいます。またこの『わからない』には程度の差があって、少しはわかる人、全くわからない人の差があります。
失語症は何が原因で発症するのでしょうか。最も多いのが脳梗塞、脳出血です。脳の一部の組織が壊れてしまうことが原因です。
脳は部位によって大まかに機能が分かれています。運動を司る部位、感覚を感じる部位、言語を司る部位、記憶を司る部位、などなど。脳梗塞等によって、言語を司る部位が損傷されると、失語症を呈します。一般に、脳梗塞等を発症した場合、障害部位は広範囲にわたって失語症、運動と感覚も機能を低下させてしまう方もいれば、運動や感覚はあまり問題ないけれど、失語症だけ重症である方もいます。もちろん、運動機能が低下して体の麻痺はあっても、失語症にはならない方もいます。
それでは失語症のリハビリとは何をするのでしょうか。
脳の機能を回復させるためのリハビリでは、
『最低限残っている言語機能を使って、脳の神経経路を再構築する』
ことが重要になります。
これは、子どもや学生が勉強するのとは少し違います。
一度獲得した機能を、再度使えるようにする訓練ですので、難しすぎる問題ではダメです。なるべく患者様が負担を感じずに、言葉を発する、言葉を書ける訓練が好ましいです。そしてそれを繰り返すことが重要だと思っています。
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